長沢のテツ
県道から細い九十九折の道をのぼってくると、明るい平地に出て、そこに
農家が3軒ばかり。 そのうちの1軒がじっちゃんの家だ。
道に沿った斜面に今春小さなログハウスが建てられて、テツはそこで飼わ
れているオスの柴犬だ。
散歩中のテツに時々出会うことがあるが、耳がピンと立ち、スックと伸びた
4本の足。 クルリと巻いたシッポなど、利口そうな切れ長の目をして
若さと風格が感じられる立派な柴犬だ。
落ち着いて何事にも動じないといった貫禄があって、まるで ○○一家の
若親分といった風情が頼もしく見えるので独断で 長沢のテツ と、私は
名づけている。 テツを引いているご主人様もチョット凄みのある
いい男で、二人はピッタリ絵になっている感じ。
もう一匹めすの柴犬がいて、どうもテツの嫁さんのようだ。
この仔は優しい目をしてどことなく女っぽい。
どちらも綺麗な枯葉いろをしている。
その仔を うめこ と名づけた。
じっちゃんが声を潜めていうには奥さんは町へ勤めに行っていて
ご主人様が朝晩の送迎をしているという。
うめこは子犬を何匹も産み、その仔たちはどこかへ売られて行く
げな、、、、なんだ ブリーダーか。。。
美しいスタイルを崩さないように一日中桜の枝にリードいっぱいに
張られてかろうじてお座りしているテツを何回も見た。
テツ うめこ きみたちは幸せかい? と聞いてみたい。
ちなみに、じっちゃんの雑種犬は、私を見つけると恥も外聞も
なくひっくり返って大喜びをしてくれる愛しいワンコだ。
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