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2007年1月 6日 (土)

橋のない川  住井 すゑ

いまから三十五、六年前、三十代の私が、書店で何気なく手にしたこの一冊は

昭和三十六年九月初版が、すでに五十版近くになっていて、いかに、多くの人

々に愛読されたかをものがたっていた。

奈良の大和盆地の特殊部落に生まれた誠太郎、孝二、二人の兄弟が差別の

中で力強く生きてゆく姿を、一部から六部へと書き次、さらに二十年を経て、

作者、住井 すゑ は九十歳で七部(完結)を書きあげた。

それでも、まだ完結ではないと語った作者は七部を最後にして残念なことに

数年前お亡くなりになってしまった、、。

この物語の中で、部落、エッタと呼ばれた人々の苦しい、辛い、悲しい、屈辱

的な差別に対する魂の叫びをはじめて知ることができた。

あくまでもフィクションであるけれどこの、書物の中に生きる人々と一緒に泣き

怒り、考えたりして多くのことを学んだ気がする。

六十代も中過ぎた私が、最近また、手にとって一部から読み始めた時、懐かしい

人達に何十年ぶりかに出会ったかのような嬉しい気持ちになった。

おばあんのぬいさん、母親のふでさん 二人をとりまく多くの人達、、貧しいなりに

いきいきと逞しく、知恵深く 人間として清く生きてゆく姿がこの七冊の中に、三十代

の私が出会った時となんにも変わらず続いていた。

頑張れ、誠太郎 負けるな孝二 体に気を付けて部落の人々。

世の中の理不尽なこと、社会の仕組みの不条理 残酷さ、、を読む度に再認識する。

物語の時代から、はるかに年月を経た現在、このような事はないと思うけれど、、、、。

私には 大変古い七冊の本だけどいつまでも側に置いておきたい宝ものだ。

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