ホラ、、また聞こえてきたよ
裏のお宅の築山に密着している我が家の西の窓から・・・
なんど言ったら判るんだぁ~ 目をつぶるなって
いうとるだろがぁ~ 眠るなぁ~
もう一回初めからやりなおしだあ いちっ にっ!
それを追って、奥さんの声で いちぃ にぃ ・・
・・・96・・ 97・・ 途切れながらも奥さんが
ご主人について、ろれつも怪しく複唱していきます。
ようやく100近くまできました。
他人の家の会話などを盗み聞きするもんじゃない・・
そうは言っても、イヤでも聞こえてくるんですもの。
静かにしている私には無理なはなしです。
暑いから午前中は窓全開にしているんですから。
きっと、隣のお姉さんも二階の窓から聞いてるでしょう。
裏の奥さんは、私と同年。 可愛らしく明るい人でした。
年下のご主人は、それは見るからに怖い、険しい顔をした
男性で、横暴で我儘、クレーム言いで、近所の私達も敬遠
していました。
奥さんが、数年前に足を悪くして手術をし、暫く正常だった
のですが、今度は転んで歩行が難しくなってから、認知症が
少しずつ悪化してきたということで、週に何回かデイサービ
スに通っているようです。
デイに行かない日は、終日ご主人が奥さんの面倒を看ていま
す。
ナンデ人が飯食ってる傍に来てワザワザションベンなんか
するんだあ~とか 寝てばかりいないで目をあけろ~ 怒声が
響いてきます。
ダカラ頭がバカになるんだ 恥ずかしいと思わんのか ・・・
眠っているのは、傾眠といって、病気の症状なんですね。
耳をふさぎたい 聞いてるだけで悲しく惨めになってくる。
ご主人が奥さんのリハビリに一生懸命なのは感心なんだけど
時々大きな罵声と、奥さんの泣き声が聞こえます。
100幾つだ? まだわからんのかッ もう一回やり直しダ
そして、執拗なかんじでまた、イチッ ニイ と始まって
奥さんの声が徐々に聞こえなくなって・・また耳を塞ぎ
たくなる怒声と、奥さんを辱めるような悪態が。
もうやめて もう帰る~ など、まわらぬ口で涙声で訴える
奥さん。
面倒を看るご主人も、気の毒だけど、奥さんも、、
このままいけば何か良くない事でも起こるんじゃないか?
二人とも倒れてしまうんじゃないか?
心配なんだけど、近くに娘さんや息子さんも居ることだし
余分なことはできません。
ご主人の疲れとストレスが爆発するんですね。
介護は本当に大変 というのは私も僅かな期間だったけど
連れ添いの時の経験で、少しだけ判っているつもりです。
哀しいナ 人間年取るってことは・・・
私の最後はどんなふうになるのか心配になります。
私なんか、傍で心配、介助もしてくれる相方さえ居ない。
他所の家の出来事にいつも涙してる私です。
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